2021年5月20日
第182回
五臓六腑に感謝!
 ”五臓六腑に染み渡る”と云う諺があります。これは仕事の後で飲んだビールが体中に染み渡り本当に美味いと感じた時などに使いますが、この五臓六腑とは中国医学で定義された人体の主な器官を示したものです。
 五臓は心臓、肺臓、脾臓、腎臓、肝臓。六腑は胃、小腸、大腸、膀胱、胆嚢、三焦を差しています。
 日頃、影日向なく働き続けてくれている身体中の臓器の役割を再認識し改めて感謝の意を示しましょう。

 先ず心臓。これは身体の中でも一番大切な臓器で、身体全体に血液を送り出すためのポンプの役割をしています。心臓が止まれば人は死にます。物事の中心を指す時に、比喩として例えば”都市の心臓部”と使われるほど大事なものです。1分間に約60~80回、1日に10万回以上休むことなく拍動しています。脈拍として意識され、緊張した時の心臓の鼓動とか、運動時の頻脈など自覚しやすい臓器で”俺は何時も働いているぞう”とアッピールしてきます。”心臓さん何時もありがとう”と左胸に手をやって感謝しましょう。
 次は肺臓。胸郭一杯に広がる肺胞の毛細血管を介して、酸素を取り入れ二酸化炭素を排出するガス交換の臓器で、その作業が呼吸です。呼吸も心臓の拍動のように四六時中作動し続けていますが、心拍と異なるのは、水泳で25メートルノーブレッシングで泳いだとか、逆に深呼吸をして緊張を解いたとか意識的にコントロールすることが出来ることです。自己調整が出来るだけ心臓よりも身近に感じますが、その分、夜間の無呼吸症候群のような事が起こって注意も必要です。”肺さんありがとう。寝てる時もサボらないでね”。
 脾臓。体の左上腹部にあり、肋骨の下に隠れていて通常は触れることのない地味な臓器です。大きさは12cm*7.5cm位で重さは100~200g程度です。胎生期には骨髄の代わりに赤血球を作っていますが、産まれてからは赤血球やリンパ球に関与して免疫機能を高め、一方で古くなった赤血球やヘモグロビンを破壊する役目を担っています。唯、手術などで脾摘を行っても循環器系の一部の機能で代替されるので死に至ることはありません。私も胃癌の手術で脾臓も摘出されましたが未だに元気で生きています。人体の仕組みは本当に良く出来ていて、未だ人智の及ぶところではありません。”地味な脾臓さんありがとう”とまだ脾臓のある人は左季肋部を撫ぜてやってください。
 腎臓。そら豆のような形をした握りこぶし位の大きさで左右の腰のあたりにあります。血液をろ過して老廃物や塩分を尿として排泄し、逆に必要なものは再吸収して体内に戻します。又、血圧を調整し、体液量やイオンバランスも調整する重要な器官です。尿の量や血圧の動きで働きはある程度解りますが、齢と共に傷みやすい臓器でメタボリックシンドロームが原因となることが多いので気を付けましょう。どちらかと云えば繊細な臓器ですので、腰のあたりを擦りながら”腎臓君ちゃんと働いているか”と油断せずにチェックすることが肝要です。
 肝臓。体内で最も大きな臓器で体重の50分の1程の重さが有り、右肋骨下に収まっています。タンパク質の合成と栄養の貯蔵、有害物質の解毒、分解。胆汁の合成,分泌など結構重要な働きをしています。肝臓は強い臓器と云われ、一部を切断しても再生する人体唯一の器官です。又、大きな蓄えがあるので、病気で85%位壊れても働き続けることが出来、症状が出にくいことから”沈黙の臓器”と呼ばれています。このように普段は強くて大人しい臓器ですが、ウイルス性の肝炎が慢性化すると知らない間に肝硬変などに悪化し元に戻らなくなることがありますので、日頃からのいたわりが大事です。右肋骨の下を触って(触れるようだと心配です)”肝臓さんありがとう”。
 六腑としては、食道、胃、小腸、大腸、肛門に至る消化器系器官が重要です。所謂中腔性器官の代表です。”喉元過ぎれば熱さを忘れる”と云いますが、喉元過ぎても、結構症状を訴えるうるさい臓器です。胃は痛かったり、胸焼けしたり、腸も便秘したり下痢したり、肛門も痔が出たりとぶつぶつ小言が多いですが、”日頃頑張ってくれてありがとう”とお腹を擦って優しくしてあげましょう。
 最後に。五臓六腑には出てきませんが、脳の存在を無視する訳には行きません。大脳、小脳、脳幹と3つの部分に分かれて、五臓六腑はもちろん、知性、感情、意志、行動など人体全てを支配しています。脳の指令なしには上記の全ての臓器が機能しません。脳に関しては親しく”脳さんありがとう”と云うよりも”これからも適切な判断お願いします”と畏敬の念を持って感謝しましょう。

 5月12日から名古屋にも緊急事態宣言が発令されて、増々精神的にも肉体的にもストレス、疲労が溜まります。五臓六腑に気を配り健康維持に努めましょう。