2023年2月20日
第203回
新しい「月経の定義」
 2月も半ばを過ぎたというのに未だに寒さは続いています。新型コロナも収束しませんし、暗いニュースばかりです。でも私は最近新聞を見るのが楽しみになりました。と言うのは政府が少子化対策に取り組む姿勢を本格的に示した記事が頻繁に載るようになったからです。私が20年も前からこのコラムで言い続けていたことが実現しそうなのです。
 要は、成人するまでの養育費を所得制限なしに手厚く助成するということです。これを実施すれば2人目どころか3人目を産む家族(シングルマザーも含めて)も増えるでしょう。
 又、前置きが長くなりました。本題に入ります。

 今年の1月に発行された産婦人科医会の研修ノートに、「生殖年齢女性における正常及び異常子宮出血」。平たく言えば月経の正常範囲のことですが、この定義が私が習った頃とは少し変更されましたので、参考のために愛読者の皆さんにもお知らせします。
 先ず月経周期ですが標準が24日~38日と以前より幅が広がりました。24日未満が頻発月経、39日以上が稀発月経と言うのは良いとして、無月経も月経周期の中に加えられていました。何だか違和感がありますが、妊娠中とか、授乳中とかも無月経と言う月経周期の範疇に入るらしいです。
 次に持続期間ですが、8日以下が標準で8日を超えると過長月経となりますが、過短月経と言う表現は無くなりました。1日でも子宮出血が有れば正常月経と言うことです。多分皆さん1日で止まってしまうと本当に月経かどうか不安だと思います。基礎体温でもつけて排卵があるかどうか確かめないと不正性器出血との区別が付かない気がします。
 余談ですが、医者も患者さんも良く使う「不正性器出血」という用語について、これは子宮以外の性器からの出血も意味しているあいまいな表現なので、診察前の表現であり、診察後は場所を限定した表現をすべきだとのことでした。その通りだとは思いますが、難しいことになりました。
 規則性については年齢に応じて18~25才は7日~9日以内。26~41才は7日以内。42~45才は7日~9日以内ならば規則的とされました。これを超えれば不規則ということです。これでいくと例えば25才の成熟婦人でも周期38日の人はプラス9日で最大47日周期となりますが、これでも排卵していれば規則的ですかね。
 月経量については患者主観として身体的、社会的、情緒的および物質的な生活の質を妨げる過度の月経血損失を過多とし、それが無ければ標準としています。今回は他の項目で細かく数値が出ていたので、全経血量は標準何グラムから何グラムと書いてあるかと期待しましたが、残念ながらここだけは患者さん主観のようでした。
 実は我々も月経困難症などの患者さんに月経量を聞くことがありますが、大抵の人は他人と比べたことがないので自分が多いかどうかわかりませんと言われます。しかし、中にはきちんと計測していて、200g出ましたとおっしゃる方がいます。今度は我々が200gが多いのかどうか判断出来なくて困ることがあります。それは標準月経量の定説が今まで数値で具体的に示されて無かったからです。今回も我々が知りたいことが書いてありませんでした。
 月経間期出血に関しては無しが正常で、よく言う中間期出血などは異常として扱われます。だからと言ってすぐ治療と言うことには結びつかないことが多いです。
又、ピルなどホルモン剤を飲んでいる時の計画外出血も無いのが正常であれば異常と言うことです。しかし、実際にはよくあることで、たまには中止しますが、継続することが多いです。
 以上が月経に関する新しい定義の概要ですが、皆さんのお役に立ちましたでしょうか。只臨床の場では定義通りに解釈できないことも多いので、我々産婦人科医の判断が必要な場面が多々起こります。
 生殖年齢女性の月経の営みそのものは今までと変わらないのに、学問的解釈は次々変わっていきます。いずれにしても日々勉強です。